男性なのに胸が女性のように膨らんでいる状態を「女性化乳房」といいます。女性化乳房には胸部の脂肪が多い「偽性女性化乳房」と乳腺が肥大化した「真性女性化乳房」とがあります。
女性化乳房とは?
女性化乳房とは、男性の胸が女性の胸のように膨らむ症状です
正常な男性の胸は胸筋(胸の筋肉)の上に少量の皮下脂肪があり、その上に皮膚があるだけなので膨らみがなく平坦です。
乳首・乳輪のすぐ下には男性でも乳腺組織がありますが、小さいために指でつまんでも良く分からない程度のもので、乳汁(おっぱい)を作る機能はありません。
ところが男性の胸が、まるで女性のバストのように膨れてくる場合があります。
このような症状を女性化乳房と言います。
女性化乳房には、ホンモノ(真性女性化乳房)と、ニセモノ(偽性女性化乳房)の2種類があります。
真性女性化乳房
真性女性化乳房とは、本物の女性のバストと同じように乳腺が発達し、男性でも胸が膨らんだ状態でになります。
乳腺の周りには皮下脂肪も増加しています。
偽性女性化乳房
偽性女性化乳房とは、単に太って皮下脂肪がついた結果、男性なのに女性のように胸が膨らんでしまう症状です。
真性女性化乳房と偽性女性化乳房は、見た目は似ていますが、多くの場合問診と触診で区別ができます。
女性化乳房は、乳輪が盛りあがった程度のものからブラジャーが必要なほど大きなものまで、膨らみの程度にはかなりの個人差があります。
片側の胸だけが膨れた女性化乳房もあります。
女性化乳房の原因
偽性女性化乳房の原因は肥満、真性女性化乳房は様々な原因があります
- 1.肝機能の低下による女性ホルモンの増加
- 正常な男性でも微量の女性ホルモンが分泌されますが、通常は肝臓で分解されています。
しかし肝機能が低下すると女性ホルモンが十分に分解されないために女性化乳房が発症し、男性の胸が膨らんだ症状となることがあります。
- 2.思春期や更年期のホルモンバランスの乱れ
- 思春期や更年期には、ホルモンバランスが乱れて男性でも女性ホルモンが多く分泌されることがあり、女性化乳房を発症し、男性の胸が膨らんだ症状となることがあります。
- 3.薬物摂取の副作用
- 下記のお薬は、副作用として女性化乳房が起こる可能性があることが知られています。
お薬が原因の場合は、お薬を中止すると数ヶ月で女性化乳房が治ることがあります。
ただしもとの病気の治療上、お薬を中止できない場合があるので、自己判断で勝手に中止せず、必ず主治医にご相談ください。
【高血圧の治療薬】
- 降圧剤の一部・・アダラート、ニフェジピン、カルスロット、レセルピン、メチルドーパ
- 降圧利尿剤・・アルダクトンA、スピロノラクトン、セララ
- 胃潰瘍、胃炎の治療薬・・ガスター、タガメット、シメチジン、ドグマチール
- 強心薬・・ジゴキシン
- 結核の治療薬・・イソニアジド
- 水虫の治療薬・・グリセオフルビン
- 抗アレルギー薬・・オキサトミド
- けいれん・てんかんの治療薬・・フェニトイン、カルバマゼピン
- 吐き気止め・・ナウゼリン、プリンペラン
- 精神安定剤・・デパス
- 抗うつ薬・・ドグマチール
- 前立腺治療薬(抗男性ホルモン薬)・・プロスタール、プロステチン
- 育毛剤・・プロペシア
- 4.内分泌疾患
- 睾丸、下垂体、副腎、甲状腺などの病気にともなって女性化乳房が発症し、男性の胸が膨らんだ症状となることがあります。
- 5.特発性女性化乳房
- 真性女性化乳房の原因で最も多いのが、これといって原因が見当たらない特発性女性化乳房です。
女性化乳房の弊害
外見の問題
女性化乳房自体は病気ではありませんが、男なのに胸が膨れているのは気になるものです。
患者様が女性化乳房修正手術を希望する理由として最も多いのが、海やプール、温泉などに出かけた時にコンプレックスを感じるというものです。
また体にフィットするTシャツを着たときに乳首が目立つのが気になるという方もいらっしゃいます。
痛みの問題
乳腺のしこりが継続的、あるいは断続的に痛むという症状の方もいらっしゃいます。
乳がんの恐れ
男性の『乳がん』は極めて稀であり、普通の男性には縁のない病気ですが、女性化乳房によって乳腺が肥大していると、男性でも女性と同様に『乳がん』に進行するリスクがあります。
注意事項
リスク・副作用
- 脂肪吸引法
- 内出血・腫れ・左右差・一時的な感覚鈍麻や痛みなど
- 乳腺切除法
- 内出血・腫れ・左右差・一時的な感覚鈍麻や痛みなど