陰茎に発生する比較的まれな“がん(癌)”で、そのほとんどは亀頭に発症し、男性のがんの1%以下にすぎませんが、統計的に包茎の人に多く発生する傾向があります。
陰茎がんは、痛みを伴わないのが普通です。がん(癌)はまず陰茎の皮膚から発生し、海綿体や尿道へと浸潤し、排尿困難となることがあります。大きくなると潰瘍(かいよう)を形成したり、がんが崩れて出血したりすることがあります。
陰茎癌は、扁平上皮癌ともいい、陰茎部悪性腫瘍の一つで、乳頭状増殖型と潰瘍浸潤型の2種類に分類されます。
乳頭状増殖型はペニス表面にカリフラワー状に増殖し、潰瘍浸潤型はペニス内部(陰茎体部)に進行し、硬化・潰瘍を形成し、排尿困難となる場合があります。
また、陰茎がんはそけい部リンパ節(大腿のつけ根の部分)に転移しやすく、進行した場合そけい部のリンパ節に触れると硬くなっているのが確認できます。
出生時に割礼習慣(包茎手術のような簡易的な処置)のあるユダヤ人やイスラム教徒の発症率が低い事などから、恥垢や外陰部の不潔などが原因で発病するのではないかと考えられています。
また、梅毒や尖圭コンジロームなどの性感染症や、陰茎がんの男性を夫に持つ女性では子宮頸がんのリスクが高くなることから、HPV(ヒューマン・パピローマ・ウイルス)の感染もリスク要因と考えられています。
診察を受けることを恥ずかしくいと感じやすい場所であることや、初期においては自覚症状が乏しいために受診が遅れ、早期発見の機会を逃すことが多いので、わずかな自覚症状を感じたらすぐに診察を受けることが大切です。
陰茎がんの治療の主は外科療法(切除)や、放射線療法となり、その他、化学療法があります。
病変部の切断(病変部から最低2cm以上離して切断)及び、鼠径部リンパ節の摘除を同時に行い、場合によっては、骨盤部のリンパ節も摘除することがあります。
また、状況により陰茎を根本から切断し、尿の出口を会陰部に形成することもあります。
術後は、足がむくみやすくなる傾向があり、陰茎は小さくなり排尿が困難になることがあります。
性交が困難な場合は、人工的陰茎の形成手術を行うことがあります。
放射線療法は初期のがんに限られ、陰茎の形状をある程度保てるメリットはありますが、治癒する確率は手術に比べると低くなります。 (I期では手術と比較し、成績はほとんどかわりません。) 治療後に陰茎の変形、尿道狭窄をきたすことがあります。 また、転移した場合疼痛などの症状があらわれるため、その対策として放射線療法が選択されることがあります。
転移が認められる陰茎がんの場合、シスプラチン、メソトレキセート、ブレオマイシンなどの抗がん剤の併用療法がよく用いられます。
幼少時に割礼(かつれい)を受ける習慣をもつユダヤ教徒やイスラム教徒にその発生が著しく少ないことや、陰茎ガンの人に包茎が多いことなどから、 陰茎がんの発生要因として、包茎との関係が重要視されています。
包茎の場合、包皮内の恥垢や他の要因などによる慢性的な刺激があり、発がんの要因となっているのではないかと考えられています。